
「ついつい買いすぎてしまう」「やる気はあるのに行動できない」「あとで後悔する選択ばかりしてしまう」──そんな“人間らしさ”に悩む人にとって本書『行動経済学が最強の学問である』(相良奈美香 著)はまさに目からウロコの一冊でした。今回はこの本の魅力を紹介しながら日常生活や仕事にどう活かせるのかを考えてみます。
この記事を読んで分かること
- 行動経済学を仕事や日常生活に取り入れる方法
- 自分のことをもっと知る方法
- 『行動経済学が最強の学問である』の要約
「人間は合理的じゃない」からこそ面白い
人が非合理的な意思決定をしてしまう要因はこの3つだと書かれています。
・「認知のクセ」
・「状況」
・「感情」
本書の魅力はまずその平易な語り口にあります。行動経済学と聞くと難しそうなイメージを持つ人も多いかもしれませんが、相良さんは「人間はそもそも非合理」という前提に立って、誰にでも理解できるように解説してくれます。例えばスーパーの割引シールに踊らされて必要ないものまで買ってしまう行動。これは「フレーミング効果」と呼ばれる提示の仕方ひとつで判断が変わる現象です。
感情も人の行動に大きく影響を与えます。感情はとても伝染しやすい性質を持っていて、職場であればチーム内のパフォーマンスにも影響を与えます。自分の周囲に悪影響を及ぼす感情を理解し、管理することも行動経済学の一つです。
このような具体例を通じて「自分が間違っていた」のではなく、「人間とはそういうもの」と受け止める姿勢を教えてくれるのが本書の特徴です。完璧に合理的な判断をしようとするのではなく自分の“癖”を理解することこそが行動経済学の出発点なのです。アメリカの大学で行動経済学の博士号を取得し、行動経済学をビジネスに取り入れるアドバイザーをされている方です。その経験を元に様々な研究や論文の内容を分かりやすく引用しながら解説をしてくれています。

無意識の「選択ミス」をどう減らすか?
本書の中で特に印象的だったのが「選択のデフォルトを変えるだけで人の行動は大きく変わる」という話です。例えば臓器提供の同意率が国によって大きく異なるのは、単に「初期設定」が違うからだという例。日本では「提供しない」が初期設定になっているため、あえて“提供する”と申し込まない限り提供者にはなりません。一方、初期設定が“提供する”になっている国では特に何もせずに臓器提供者となるのです。
これは職場や家庭でも応用が利く話です。例えば「やってもやらなくてもいい」という仕事を“明確にやるべきもの”として提示するだけで周囲の行動が変わることもあります。人は意外と「考えずに選んでしまう」もの。だからこそ「無意識に選ばれる選択肢」を設計することがより良い行動につながるのです。
私自身、タスク管理アプリの使い方を少し工夫することで、先延ばしが劇的に減りました。毎朝「今日やること」が自動で表示されるように設定しただけなのですが、これがまさに“デフォルトの設計”の力なのだと気づかされました。

行動経済学を「自分の味方」にするには?
本書は「人間は非合理」という事実を悲観的に捉えるのではなく、それを逆手に取る発想を提案してくれます。例えば「やる気が出ないなら、やる気に頼らない仕組みを作ろう」「誘惑に負けるなら、あらかじめ誘惑に近づかないようにしよう」など自分の弱さを前提に行動を設計することがおススメされています。
これを読んで私は「自分を律すること」に力を注ぐよりも「自分が自然と動ける仕組みを作る」ことにシフトしようと思いました。例えば、お菓子をやめたいならまず買わない。筋トレを続けたいなら、朝起きたらすぐにウェアが目につく場所に置いておく。こうした“小さな工夫”が、結局は長続きのカギになります。また、行動経済学は他人との関係にも活かせます。相手の選択肢をどう提示するか、フィードバックをどう伝えるか。少しの工夫で、人を傷つけずに行動を促すことができる──この本はそんな“人を動かす技術”にも通じるヒントをたくさん与えてくれました。
みなさんは「快楽適応」という言葉を知っていますか?これは人は何が起こっても繰り返しベースラインに幸福度が戻るという理論でポジティブなことでもネガティブなことでもどちらにも当てはまります。この理論から言えることは幸せを感じることは細切れに行う、逆にネガティブなことは一気に片付けてしまうことで行動経済学を「自分の味方」にすることにつながります。

非合理を笑い飛ばす知性を
『行動経済学が最強の学問である』は知識としての学問というより、日常を生きやすくする“実践の学問”として、多くの気づきを与えてくれる一冊でした。人間は完璧じゃない。だからこそ時には選び間違える。でも、それを前提に生き方を調整していけばいい。そう思えるようになっただけでもこの本を読んだ価値は大きいです。
1「この手順を踏まなければ口座認証はできません」
2「あなたの口座認証をするためのお手伝いをさせてください」
この1・2の文章でどちらが言われて気分が良いでしょうか?2と答える方が多いのではないでしょうか。その理由としてあくまで自分の意思を持って口座認証の手続きをできるかどうか関係しています。
1は「やらされている感」・2は「自分の意志でやっている感」があります。このように人は自ら意思決定をしていると思いたがる生き物です。このことを知っているだけでも自分を知るチャンスが生まれますね。
もしあなたが、「自分はダメだな」と思う瞬間があるなら、一度この本を手に取ってみてください。きっと、自分をもっと好きになれるヒントが見つかるはずです。


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